季節の特集

特集・秋のくらしの森

季節の健康コラム

食物繊維の摂取と健康効果

医学博士
植地 貴弘さん

見直される「第六の栄養素」

魚介類や野菜中心の日本食は健康的といわれますが、実は、白米(糖)や塩分を多く含んでいます。一方、野菜、果物、ナッツ、魚介類を多く含む地中海食は、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病のリスクを大きく減らすことが明らかになっており、その中に多く含まれる食物繊維が注目されています。
食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物に含まれている難消化性成分」の総称で、以前は「食べ物のカス」として扱われていました。しかし、昨今は有害物質を体外に出す働きが見直され、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素に次ぐ「第六の栄養素」として改めて脚光を浴びています。
研究が進み、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満のリスクを下げることも明らかになりました。今日では、食物繊維が腸内細菌叢に良い影響を与えることで免疫力を調整し、花粉症のようなアレルギー反応を抑制する可能性を探る研究も行われています。

サプリメントでの摂取も有効

食物繊維は大きく分けて、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維は水分を吸収して数倍から十数倍に膨らみ、糞便量を増やすなどの効果をもたらします。対して、水溶性食物繊維は粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、小腸で他の栄養素の消化・吸収を抑制したり阻止したりする作用があり、血中コレステロール低下や血糖値の改善に効果的です。

最近では食べる順番も重要視されています。同じ栄養量(糖質量)の食事でも、食物繊維を多く含む野菜を先に摂取し、炭水化物を最後に摂取するだけで食後血糖値が抑えられるだけでなく、長期的には高血圧、高脂血症、肥満の改善にもつながるのです。
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食物繊維の一日あたりの目標摂取量は、男性20g以上、女性18g以上とされています。しかしながら、食事だけでカバーするのは難しく、どの世代も目標量の食物繊維を摂取できていないというのが実情です。
そこで、食物繊維を効率的に摂取できるよう、水溶性食物繊維がサプリメントとして多く販売されています。最近では、先述した高血圧、高脂血症、肥満を改善する作用を期待して、低粘性・低甘味で溶けやすい水溶性食物繊維である難消化性デキストリンが成分として含まれる特定保健用食品(トクホ)の商品も増えてきています。健康維持のため、活用してみてはいかがでしょうか。