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季節の健康コラム

「ノロウイルス」感染の予防と対策

医学博士
植地 貴弘さん

口の中に入ることで感染

今回は、冬になるとその名をよく聞く
「ノロウイルス」について解説します。
ノロウイルスは、人の口の中に入ることで感染し、人の体内でのみ増殖するウイルスです。急性腸炎の感染性病因ではノロウイルスが20%と最も多く、また、発症数の45%が冬期に集中しているため、特に冬に気をつけなければならない感染症といえます。
人の腸管で増殖すると、感染後24~48時間で嘔吐・下痢の症状が始まります。発熱は40%の患者にしか認められませんが、腹痛、頻回の下痢による脱水症状(ふらつき感)などが2~3日間続きます。

感染予防法は個人の対策のみ

患者の糞便や嘔吐物には1グラムあたり100万~10億個もの大量のノロウイルスが含まれていますが、口の中にわずか18個入るだけで感染してしまうほど、感染力は非常に強力です。ウイルスは感染してから1週間程度糞便中に排泄され続けるため、症状が治まっても感染拡大の予防には気をつけなければなりません。さらに、ノロウイルスは乾燥状態の4℃で2ヵ月間、20℃で1ヵ月間感染性が持続するため、感染源への対処を早急・的確に行わないと、空気中にウイルスが舞い上がることで感染を拡大させてしまいます。

家族など自分と密に接する人が感染してしまった場合、自らも感染する割合は30%以上、また、ノロウイルス患者の50%以上が、病院や学校、ホテルなど、人の多く集まる場所で感染していることもわかっています。
ノロウイルスなどの下痢を伴う腸炎にかかってしまった場合、症状のピークは1日程度ですが、スポーツドリンクなどの水分の大量摂取と、整腸剤の内服くらいしか治療法はありません。10日以上症状が続く場合は、他の疾患の可能性もあり、抗菌薬の内服も検討されます。
ノロウイルスの感染拡大の防止は、個人で対策を行うしか方法はありません。感染予防のポイントは、“85℃以上で1分間以上の加熱”。旬のカキは生食も美味しいですが、加熱して食べる方が安心です。また、調理の際はまな板にウイルスがつくので、こまめな消毒も欠かせません。また、流行期に人の多く集まる場所に行った場合は、こまめに手洗いをして予防しましょう。

ノロウイルス感染予防のポイント

①手洗いは流水と石鹸で20秒間以上行う
②カキなどの二枚貝は85℃以上で1分間以上加熱
③トイレ、ドアノブ、水道の蛇口などは定期的に消毒
④消毒はアルコールでなく次亜塩素酸を使う
⑤次亜塩素酸が使えないものは、スチームやアイロンで消毒